麻雀(マージャン)のプロリーグ戦「Mリーグ」のスタジオで取材していると、選手たちの関係性を垣間見るときがある。

 今季、ある日の試合前。アベマズ・多井隆晴(52)がパイレーツ・小林剛(48)を見つけた。「剛、体気をつけろよ。年取ると色々あるから。健康診断とか行っておけよ?」と語りかける。

 「ははは、ありがとう」と小林は笑顔で応じた。

写真・図版
インタビューに答える小林剛=前田健汰撮影

 ともにプロ歴は30年近い。一緒に戦ってきた時間、そしてこれからも麻雀界を引っ張っていく覚悟といったものが、なにげない会話からにじんだ。

 思い出すのは2年前、2人が歌手の浅香唯さんと対局し、小林が浅香さんに麻雀の最高役が重複する「ダブル役満」を放銃した有名な動画のシーンだ。

 放銃した直後、多井が「やめちまえよ麻雀プロ!」と叫ぶ。それにも小林は、終始ニコニコしていた。

 「仲間同士のいじりなので全然気になりませんでした」と小林は振り返る。

 「多井さんは多少の反感を買うのは覚悟の上で、麻雀プロの地位向上を目指してきた。強いだけでも、しゃべれるだけでもない。あの立場で、これだけ最前線で活躍できる人はなかなかいないですよ」

ひょうひょうと打牌を続け、ロボとも呼ばれてきた。そんな彼が多井隆晴をなぜ「同僚」と呼ぶのか。後輩への感謝、常識を疑う自負……。人間、小林剛を追った。

  • 多井隆晴を追う白鳥翔や昨季MVPをとった鈴木優の師弟の物語や打牌解説はこちらから

 そう小林は語る。語れる理由…

共有